⑥瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
民法(債権法)の改正により、実務上の影響がある部分について新旧の比較や改正項目の概要、注意点を解説していきます。
旧民法における瑕疵担保責任と改正民法の契約不適合責任の内容に違いがあることは前回触れました。今回は、損害賠償の範囲の違いについて見ていきたいと思います。
旧民法の瑕疵担保責任では、損害賠償の範囲は信頼利益(支払う必要がなかった損失)に限られるとされていました。
改正民法の契約不適合責任の損害賠償は、債務不履行の一般原則に従って、履行利益(得られるはずだった利益)を賠償するとされています。例えば、不動産の売買において買主が転売を予定していた場合などでは、転売によって得られたであろう利益も賠償する可能性がある、ということになります。
瑕疵担保責任と比べ契約不適合責任においては、損害賠償が多額となることもありえます。契約の特約において損害賠償の範囲を限定しておく必要があるかもしれません。
(債務不履行による損害賠償)
民法415条(抄)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
民法564条
前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
〇瑕疵担保責任と契約不適合責任のまとめ
項目 | 瑕疵担保責任 |
契約不適合責任 |
責任の内容 |
損害賠償 契約解除 |
追完請求・代金減額請求 損害賠償・契約解除 |
損害賠償における債務者の帰責性 | 不要 | 必要 |
損害賠償の範囲 | 信頼利益の範囲 | 履行利益の範囲 |
契約解除の要件 | 契約の目的を達することができない場合に限り解除可能 | 軽微な債務不履行でない限りは解除可能 |