④第三者のためにする契約に関する規定の整備
民法(債権法)の改正により、実務上の影響がある部分について新旧の比較や改正項目の概要、注意点を解説していきます。
第三者のためにする契約に関する規定について、旧民法において解釈上の疑義があった部分を明文化する改正が行われました。
(第三者のためにする契約)
民法537条2項
前項の契約(第三者のためにする契約)は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
旧民法においては、第三者のためにする契約締結時に第三者が特定していることが要件となっているか否かの記載はありませんでした。
上記のとおり、改正民法においては明文化されています。
(第三者の権利の確定)
民法538条2項
前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
例えば、債務者Aと債権者Bとの間で第三者Cのためにする契約が締結されたとします。
債務者Aが第三者Cに対する債務を履行しない場合、前回(③債務不履行による解除の要件の見直し)の記載にあるように、債務不履行による解除には債務者の帰責性は不要とされていますので、債務不履行が軽微なものでなければ、債権者Bは債務不履行を理由に契約を解除することができるはずです。
しかし、第三者Cの権利が既に発生している状況において、Cの関与なく契約を解除することができるとすると、Cの有する期待権を一方的に消滅させることになります。
そこで、改正民法において、第三者のためにする契約の解除につき、上記のとおり第三者の承諾を要件とすることが定められました。